[SR:Returns] The Dead Man’s Switch Review


公式シナリオ “The Dead Man’s Switch” をクリアしました。プレイ時間は約18時間です。海外レビューでは約12時間とされていたので、会話パートでの読解スピードの差がかなり出ているのだと思います。


[Story]
Shadowrunner (非合法ないし合法とは言いがたい仕事を破格の報酬で引き受ける職業) である主人公は現在文無し。早急に次の仕事を見つけなければならないものの、連絡先の同業者や Fixer (Shadowrun における情報ブローカーで Runner にとっては仕事の仲介人) は尽く死んでいるか行方不明。

ちょうどその時、数年前に組んで仕事をした Runner から突然連絡が入ります。しかし、要件は仕事のお誘いではなく依頼でした。それも少し奇妙な依頼。背に腹は代えられないということでその依頼を受諾。Seattle に向かい調査を進めるのですが…。

という感じで始まります。事件の痕跡を追ううち、思いもよらない大きな陰謀に巻き込まれていことになるわけですが、それはプレイしてからのお楽しみということで。

会話シーンが多くテキストの量は多めです。特に序盤は戦闘がアッサリしているので会話シーンの割合がより多く感じられました。台詞だけでなく人物の様子までしっかり書き込まれていて、読むのに苦労しますが、苦痛を感じることは無く、むしろしっかり書き込まれているからこそ一生懸命読んでやろうという気持ちにさせてくれました。

Skyrim に比べるとスラングや話し言葉風の記述、そして Shadowrun 特有の言い回しや固有名詞が容赦なく飛び出します。ある程度 Shadowrun の世界に関する基本的な知識が無いと意味不明な部分があるかもしれません。この作品から Shadowrun Universe に触れるプレイヤーへのフォローがあると良かったですね(一応ヘルプに小さな用語集が付いてます)。

逆に、既に TRPG の Shadowrun を経験済みの方なら違和感なく入っていけると思いますし、そもそもこの作品はそのようなプレイヤーに向けたものなんだと思います。Pen & Paper をかなり意識した作りになっています。

とは言え、やはり最大の関門が言葉の壁であることは否定出来ません。本作を中断するケースのほとんどが「英文読みすぎて頭が疲れた」という理由からでした。最近は英語のゲームばかり遊んでいるので大概慣れているとは思ったのですが、ボイスアクト無し、キャラクターのアクションも無しでこれだけの文章量と内容を消化するのはしんどかったです。


[Battle]
戦闘はターン制。敵と味方のターンを交互に繰り返すタイプで、ターン内であれば好きなキャラクターを好きな順番で AP の範囲内で行動させることが可能です。AP は初期値2ですが途中から3になります。

基本は遮蔽にカバーしながらの射撃戦となります。隠れる遮蔽物によって効果が三段階あり、効果が高いほど命中率が低下します。もちろん、遮蔽物を迂回して側面や後方から攻撃すれば命中率は高まりますし、グレネードを遮蔽物の向こう側に投げ込んでダメージを与えることもできます。

射線に関しては気にする必要はありませんでした。ただ、ショットガンは通常射撃でも範囲攻撃になるので、敵の近くに居る味方が被弾してしまうことがあります。他の武器でも範囲攻撃をすると、範囲内のキャラクターには敵味方関係なく命中する可能性があります。

主人公を射撃主体のキャラクターにしてしまったせいもあるかと思いますが、序盤は割と単調な戦闘が続きました。徐々に出現する敵の数や種類が多様になっていき、後半は骨のある戦闘も幾つか経験しました。それでも、主人公が死んでゲームオーバーになったのは一回。最終的に味方に死者は出ませんでした(終盤はダウンして蘇生が必要になるケースがありましたけど)。


ヌルいかと言うとそうでもないですが、トライアンドエラーを繰り返して試行錯誤するタイプのゲームかと言われるとそれも違います。戦闘の雰囲気は X-COM に似ているんですが、あそこまでシビアじゃないですね。まぁ、油断してカバーしないで棒立ちしてると蜂の巣になるのは同様ですが。

ちなみにランダムエンカウントはなく、どのシーンでどんな敵がどこから出てくるのかは固定になっているようです。戦闘も演出の一つと割り切れば、遊びごたえもありますし十分な内容だと思います。ただ、キャラクターのビルドを熟慮し、戦術を練りに練ってやり込むというタイプではありません。


育成できるキャラクターは主人公だけで、パーティのメンバーは基本的に Fixer 経由で雇用することになります。ミッションによってはハッキングが必要になるため、必ず Decker を連れて行かなければならなかったり、ストーリーの都合上、強制的に参加するキャラクターもいます。

一周目では主人公が他のメンバーより一回りくらい強いよう感じました。射撃に特化してスキルを上げていたせいか命中率の差は顕著で、終盤は必ず味方に命中率上昇の Buff をかけるよう心がけていたくらいです。これ、例えば主人公が Decker で物理世界での戦闘力が著しく低い場合、戦闘の難易度がかなり上がってしまうのではないか、という懸念があります。

尤も、後半は多めに Karma (スキルポイント)を獲得出来ますので Decking スキルだけに傾倒した場合ポイントが余り気味になるのでは無いかと思っています。もしそうなら余剰分を Drone Combat 辺りに回せばそれなりに戦えるのではないでしょうか。


終盤になるとハッキング中の Decker を守りながら戦闘する場面があります。とてもサイバーパンクらしいシチュエーションで興奮しました。できれば、前半戦でも Matrix と物理世界で並行して戦闘をするようなシーンがあると良かったです。


Matrix へ侵入できるのは一人。本人も様々な攻撃が可能で物理世界での Mage のような感覚。Matrix 内に留まれる時間は限られていますので、 Shaman の Spirit のようなプログラムを召喚しサクサク進める必要があります。Node 内の敵(防衛用のプログラム?)を全て倒すとデータを参照可能になったり、エレベーターを動かしたり、監視カメラをやタレットを掌握したりできます。

敵の Decker との戦闘はありませんでしたし、例えば事前に建物のセキュリティを掌握してから侵入するという選択肢もありませんでした。この辺は、あまり複雑にしないための措置なのかもしれませんが Decker が本領を発揮するのが終盤になることと相まって、彼らの影を薄くしている要因になっています。


[Cyberware]
Shadowrun と言えば Cyberware も欠かせません。序盤からサイボーグ化は可能ですが、一部のパーツを除き費用が高額なので本格的に手を付けられるのは終盤になってからです。

一度サイボーグ化すると生身に戻すことが出来ず、さらにパーツに応じた Essence を失うことになります。そして、 Essence を1失うごとに魔法の再使用時間が1増えていきます。つまり、魔法と Cyberware は相容れないものであり、基本的に Mage や Shaman は身体に Cyberware を埋め込みません。

Essence の制限があるため、攻殻機動隊のように全身をサイボーグ化することは不可能です。Essence とは分かりやすく言うと人間性のようなもので、それを全て失うと正気では居られなくなる、というのが Shadowrun でのルールです。Essence を大量に失った者は違法な薬物に走ることも多いようですし、それだけ危険な行為というわけです。

しかしながら、 Essence を失うだけの価値は大いにあります。特に胴体と四肢は Essence のコストが大きいですが、それに見合った能力を得ることが出来、フロントラインで戦う Samurai なら、この魅力に抗うことは難しいでしょう。

ゲーム的な話をすると、ミッションに連れて行く仲間はお金を払って雇用せねばならないため、所持金を全部自分の強化に充てることは出来ません。サイボーグ化よりも、武器や回復アイテムの方が重要です。フリーミッションはありませんし、敵の死体からアイテムをルートすることもできませんので、お金は計画的に使いましょう。


[Character]
スキル制です。まっさらな状態からポイントを割り振ることも可能ですが、初見の場合はいずれかのアーキタイプを選んで、それをベースにキャラクターを構築していく事をオススメします。ポイントの振り直しは出来ませんし、フリーミッションでポイントを稼ぐ事も不可能なので、ある程度育成方針を固めておいた方が良いでしょう。

スキルの構造は、まず Body, Quickness, Strength, Intelligence, Willpower, Charisma の6つの Attribute が基本となります。そして、Body を除く5つの Attribute の下に Specialization という個別のスキルがぶら下がっています。

例えば敏捷性を表す Quickness は以下のような構造になっています。

Quickness
├Ranged Combat
│ ├Pistol
│ ├SMG
│ ├Shotgun
│ └Rifle
└Dodge

各種 Specialization は親となる Attribute 若しくは Specialization の値までしか上げられません。また、種族によって Attribute や Specialization に上限が設けられており、得手不得手があります。細身の Elf は接近戦が苦手ですが、敏捷性に優れるので射撃や回避能力を極限まで高められる、といった感じです。


これら Attribute や Specialization は戦闘スタイルに大きく関わってきますが、会話シーンでの選択肢の数にも影響を及ぼします。特に、相手からの印象が良くなる Charisma 、強い態度を取ることが出来る Strength 、コンピュータへのハッキングに必要な Decking は重要なステータスになります。

他に会話シーンに影響するステータスは Etiquette です。Charisma の値を伸ばしていけば複数の Etiquette を選択可能になりますので、様々な相手に対して話を優位に進められます。


[Orverall]
$20でこれだけの内容を楽しめたのは嬉しい誤算でした。公式シナリオはサラッと終わって、後はユーザが作ったシナリオを楽しんでねーというゲームだと思っていましたので。

不満点といえば、もうちょっと Decker の活躍の場を用意して欲しかった点と、サイドミッションの類が少なくてほぼ一本道のシナリオだった点。そして、ミッションをクリアする方法が複数用意されていない点です。正面突破でいくか、ハッキングを絡めたステルスでいくか選べるミッションが欲しかったです。

ユーザが作成したコンテンツもボチボチ上がりだしています。なんとスーパーファミコン版 Shadowrun のリメイクプロジェクトも立ち上がっています。公式シナリオは無理ですが、ユーザ作成シナリオの場合はキャラクターのインポートが出来るものもありますので、末永く遊ぶことが出来そうです。

$20なら迷うこと無く買い!と推したいところですが(特に TRPG 経験者の感想が聞いてみたい)、英語の苦手な方々には大変オススメしにくいタイトルです。Skyrim くらいなら(あまりオススメしませんが)手間かけて辞書引きながら遊べるレベルですが、本作でそれをやるとあまりにも時間がかかり過ぎますし、面白くありません。

かといって、適当に流し読みして三割程度の理解で大丈夫かと言えば、戦闘よりも会話シーンでのやり取りや一連の事件の真相に迫っていく過程が面白いので…それも勿体ないし、何より意味不明でやはり楽しめないのではないかと思います。

X-COM のようなタクティカル RPG がやりたい人は過度な期待をされない方が良いでしょう。逆に読み物系 ADV が好きである程度英語力のある人はかなり楽しめるはずです。できることならば、基本的な Shadowrun の知識を仕入れてからのプレイを推奨します。

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