[Shadowrun:HongKong] City of Darkness 1/2
Shadowrun: Hong Kong のプレイ日記的なもの。ダイアログの翻訳を織り交ぜつつ、シナリオを追いかけていきます。
“City of Darkness” ― SIN を消去する交換条件として Kindly Cheng のメッセージを裏切り者へ届ける
Kindly Cheng の要求は単純明快。彼女のメッセージが入ったメモリースティックを、九龍城砦の中のアジトに居るであろう Strangler Bao へ届けるだけ。ただし、Cheng の機嫌を損ねないためには Bao の手下を殺してはならない。
というわけで、道案内のために Is0bel を連れてきた。いくらココが”世界最低のスラム”であろうとも今は2056年だ。Bao のアジトにはそれなりのセキュリティが施されているに違いないし、正面突破するわけにもいかないのだからデッカーの力が必要になるかもしれない。
もっとも、連れてこられた当人は生まれ故郷に戻ってきたことが相当気に入らないようだ。
香港に着いてから全てが滅茶苦茶になってしまったにも関わらず、本来足を踏み入れるはずだったこの場所、九龍城砦にたどり着いた。運命とは奇妙なものである。
Raymond は城砦内に残してきた ”Prosperity” を探すつもりだったと言うが、本当にそんなものがあるとは到底思えない。Cheng が言っていた通り、精神状態が相当良くないというのは本当なのかもしれない…だが、なぜ?
Is0bel の案内でびっしりと立ち並ぶビルの屋根の上を進んでいると、血まみれの女性がうずくまっている。命に別状はなさそうだが、かなり消耗していてしばらくは身動きが取れそうにない。
話を聞けば、彼女は香港大学の学生でフィールドワークの為に九龍城砦までやってきたそうだ。研究対象は「風水」。
世界が覚醒する前の風水は人とその周りの環境の調和を図る哲学的なモノで、建築やインテリアなどに取り入れられていた。ところが、第六世界が訪れ魔法が復活した影響で風水はそれ以上の存在となる。
風水的に見て良い状態を保つと「良い気」が巡り、周囲の運気を増進させ、逆に風水的に見て悪い状態であれば、「悪い気」がその場に滞り、周囲の運気を減退させる。西洋世界ではあまり聞いたことがないが、中国を中心とした地域ではメガコーポも取り入れるほど重要視されているとのこと。
そして、この九龍城砦は風水的に見て最悪な状態で、それがこのスラムをより悪くしているのだ、と彼女は考えている。
九龍城砦の風水を改善するには、あと3箇所の場所を「修復」しなければならないらしい。だが、彼女は見ての通り身動きが取れない。
【やっても良いけど、約束は出来ないわよ】
血まみれの香港大学の学生からノートを受け取り、道すがら風水を改善するのに協力することにした。
更に屋根をつたって進むと、ガタイの良いタトゥーだらけの連中が数名、近寄りがたい雰囲気を放ちたむろしていた。トライアドのメンバー… Bao の手下だろう。
Is0bel が要件を伝えるものの、Kindly Cheng の名を出すと態度が一気に硬化。もはや取り付く島もない状況になった。当初の予定通り、裏口から侵入するしかなさそうだ。
九龍城砦の低層地区に降りると雰囲気は一変する。まるで地下に降りたかと錯覚するほど真っ暗で、ところどころに設置してあるランタンや投光器、ネオンの明かりだけが頼りになる。
City of Darkness とはよく言ったものだ。
途中、電子ロックの掛かったドアを見つけた。横にはボコボコに凹んだキーパッドが付いており、なんとか使えはするようだ。とは言え、キーコードは分からないので Is0bel に対処可能か尋ねる。
「簡単ね」
サイバーデッキから何かしらのプログラムをロードすると、いとも簡単にドアのロックは解除された。
ドアの向こうには上に向かうハシゴが設置されているが、ハッチは電子制御のボルトでガッチリとロックされている。こんなに厳重に施錠してあるということは、アジトへの入り口だろう。周辺に物理的なスイッチなどが見当たらないので、こいつの解錠も Is0bel に頼むしかない。
Is0bel は再びデッキを取り出し、近くにあった大きなターミナルからマトリックスへジャックインした。程なくしてハシゴのボルトロックが動く音がしたが、Is0bel は依然マトリックス内に留まっている。
ハシゴが解錠してから更に数分、ようやく Is0bel が戻ってきた。どうやら Bao のアジトのセキュリティコードと、外来生物の密売人リストもくすねて来たらしい。リストの方は Shadowrunner が集う闇掲示板で売却できるらしい…妙なものを欲しがる奴が居るものだ。
ハシゴを登ると物置と思しき小さな部屋にたどり着いた。1つしか無い扉を開け、薄暗い廊下に出る。
注意深く周囲を警戒しながら小部屋を探索するも、外の物々しい警備とは裏腹に、アジト内部には人っ子一人居なかった。Bao という男は間抜けなのか、逆に余裕の現れなのか…それとも単に人員不足なのか。
唯一キーパッドの付いている扉を見つけ、そこに Is0bel が先程見つけてきたコードを入力する。電子ロックが解錠され、扉が勢い良く開く。
部屋の奥に大柄のヒューマンが立っていた。突然の訪問者に対し銃こそ抜かないが、とっさに警戒態勢を取った。上半身は筋張った筋肉に覆われ、身体は所々がサイバネティクス化されている。Strangler Bao その人だ。
【Kindly Cheng からのメッセージを届けに来た】
Bao はニヤリとしてこう続けた。
「Kindly Cheng にこう伝えろ。九龍城砦での仕事はもう無いとな。Strangler Bao は自分の手で昇進を勝ち取ったのさ。それから、今後、別の使い走りを寄越せば、箱に詰めて送り返してやる!」
ココで押し問答しても時間の無駄だ。メッセージを伝えさえすれば仕事は終わる。
【良いから黙ってメッセージを聞け。そしたら喜んで帰ってやる】
データスティックを乱暴に差し出すと、Bao は不満そうに受け取りプレイヤーに差し込んでメッセージを再生した。
Kindly Cheng はまっすぐカメラに向かって語り始める。
メッセージの大体の内容をまとめるとこうだ。
Bao は他の Straw Sandal、つまり Cheng と同じ役職で組織内で調整役を務める人物と通じて、Yellow Lotus から資金を盗んでこの度の反乱の原資にしていた。
一連のカネの流れについて、取引明細や口座の情報、Bao の個人的な通信の内容、資金洗浄に使っている麺屋などあらゆる証拠を、既に Cheng は押さえている。だが、彼女は敢えてこの事を公にせず、回りくどい方法で Bao へメッセージを送ることにしたのだった。
「正直なところ、アンタの野心には大変関心しているんだよ。私もまだまだ”素直さ”とか”忠誠心”とかいう事柄について理解が足りないようだ。でも、アンタにはまだ利用価値があると思っている。」
「喜んで共に仕事をしたいとね。」
「だけどね、こんなことを起こされてしまった以上、私達のパートナーシップについて再確認が必要だねぇ?」
Cheng はカメラに歩み寄る。
「これは”貸し”だよ。」
「アンタやアンタの部下は私の玩具に過ぎない。私はアンタのはるか上をいってる。ちゃんとこの事を理解してもらわなきゃ困るね。」
彼女はいつもの煙草を取り出し火を付け、ゆっくりと時間を掛けて煙を吸い込んだ。
「24時間やる。それまでに私の前で許しを請わないのなら、この情報は然るべきところに送られ、お前は魚の餌になる。」
「お前次第だよ、Bao。24時間だ。」
メッセージが終わると Bao はゆっくりとスクリーンに背を向けた。顔からは血の気が引いて生気が感じられない。
「失せろ」
彼は身体をこわばらせたまま、視線を床に落とし続けた。
「そして Mrs. Cheng に明日会いに行くと伝えろ…明日の朝イチで、だ。」