[Shadowrun:HongKong] Hard Landing
Shadowrun: Hong Kong のプレイ日記的なもの。ダイアログの翻訳を織り交ぜつつ、シナリオを追いかけていきます。
Hard Landing ― 養父に助けを請われ香港へ降り立つ
シアトルの無法地帯から自分を拾い上げてくれた育ての親、Raymond Black から8年ぶりにメッセージを受け取った。
「急いで香港へ来て欲しい…君の助けが必要だ」
「詳しい内容は直接会って説明する」
既に自分の口座には渡航費用と幾らかの新円が振り込まれていた…
チェクラップコクの空港から幾つもの検問を通過し、Raymond との待ち合わせ場所であるヴィクトリア・ハーバーへ向かうため、水上タクシーに乗り込んだ。
水上タクシーを降りると2人の人物に出迎えられた。Duncan Wu は小さい頃から共に危険地帯を生き抜き、そして共に Raymond に養育された兄弟とも呼べる男だ。彼とも8年ぶりの再会。現在は Lone Star で働いているらしい。
もう一人は Raymond Black…ではなく Carter と名乗る女エルフだった。彼女もまた Lone Star のオペレーターであり、Duncan の上司にあたるようだ。Duncan 曰く「お前が姿を現すか確証が無かったからバックアップ要員として呼んだ」とのこと。
あんな去り方をしたから信用されないのも仕方ないか…。
肝心の Raymond の姿が見当たらないが、待ち合わせ場所はもう少し先にあるらしい。コムリンクでの応答が無く心配なので、急いで合流地点まで移動することにした。
合流地点への最短ルートはゲートが閉じていて通れなかった。「さっきまで開いていたのに」と愚痴る Duncan 。やむをえず近くの建設現場を抜けて回り道することにしたものの、運悪く地元のチンピラに絡まれてしまう。
Duncan が Lone Star のバッジを掲げるも効果なし。ヤクか武器の密売人と言ったところだろう。むこうはヤル気満々だ。
Duncan はライフルの扱いも上手いが、特徴的なのは接近戦で相手を組み伏せるテクニックに秀でている点だ。Lone Star 仕込なのだろうか。
Carter はメイジだ。攻撃、サポート、回復、など幅広いスペルを扱える。
少しの魔法と銃弾が飛び交っただけで戦闘はあっという間に終わった。さすが、北米随一の警備会社の現役オペレーターである。
Raymond との待ち合わせ場所には既に4人の人影があった。港のチンピラとは明らかに雰囲気の異なる連中で、コートで隠そうとしているようだが武装していることははっきりと分かった。
こういう時の Duncan は相変わらずだ。数回言葉を交わしただけでライフルを構え Raymond のことについて”尋問”しはじめた。相手もプロだ。すぐに4つの銃口がこちらに向く。
「みんな、クールにいきましょう!」という Carter の声も虚しく、一触即発の状況に陥ってしまう。
一時はどうなることかと思ったが、相手方のリーダーと思しきトロールと会話を進めるうちに状況が把握できてきた。彼らはシャドウランナー…つまり裏稼業専門の傭兵であり、必要であれば法に反する行為も厭わない犯罪者集団。Raymond はそんな彼らを護衛として雇い、世界で最も危険なスラムの1つである九龍城砦へと向かうつもりだったらしい。もちろん、自分と Duncan も一緒に、だ。
ところが、指定の時間になっても Raymond は現れず、それどころかクライアントの”連れ”から突然銃を向けられ尋問まがいの対応を強いられた、という次第であった。
とりあえず現在の状況は把握できた。問題は Raymond の所在がわからないという点だ。今のところ手がかりはこのシャドウランナーたちしかない。とりあえず互いに銃を下ろしてゆっくりと話を―
3つの銃声。音からすると大口径のスナイパーライフルのものに違いなかった。
さっきまで言葉を交わしていたトロールの頭がはじけ飛び、地面に鮮血が飛び散った。続いて、奥で黙って突っ立っていたヒューマンも同様に地面に倒れた。
「Carter!」
Duncan の叫び声で後ろを振り返ると、血溜まりの中に女エルフが横たわっていた。
HKPF(Hong Kong Police Force) の警官がメガホンで投降を呼びかけているのが聞こえる。自分と Duncan の名前を連呼しながら。
突然すぎて事態が飲み込めない。確実なのは香港の地元警察から命を狙われているということだけ。シャドウランナーと勘違いされたのだろうか。しかし、連中は自分と Duncan の身元を把握している様子だ。何かがおかしい…
「ちょっと静かにしてろ!すぐ終わる!」
シャドウランナーの女オークはそう言うやいなや、トランス状態に入った。ビー玉のような瞳はじっと地面を見つめ、唇はかすかに動いているが声は聞こえない。
「オーケー、この通りの奥に抜け道がある。ついてきな!」
「ついてこい」ということは、HKPF の封鎖を抜けるということだ。地元警察と交戦すれば非常に面倒なことになる。
だが、四の五の言ってる場合じゃない。こうなったら女オーク―よく見るとネズミを二匹連れている―を信じて”抜け道”とやらに辿り着くしかない。パトカーや土嚢で通りに陣取った HKPF を片付けながら、慎重に前進する。スナイパーはまだこちらを狙っているはずだ。
女オークはサブマシンガンを持っているが、本職はシャーマンのようだ。ということは、彼女に付きまとっているネズミはトーテムということか。
シャイな女ドワーフの方は、サイバーデッキを背負っている。つまりデッカーに違いない。彼女は HKPF のバイクのアクセスポイントを使い、一瞬でドローンを無力化してしまった。手際の良さに驚かされる。
銃弾と魔法をかい潜りながら女オークが抜け道だと言うビルのエントランスへ駆け込んだ。その後は先導に従うままに、路地裏や地下室、空きビルの中などを通り抜け、ヴィクトリア・ハーバーの下を通る下水道に降りたところで足を止めた。
「よし、撒いたな」
ラットシャーマン―ドワーフから Gobbet と呼ばれている―は来た道を振り返りながら呟いた。
Duncan は悪態をつきながらホルスターから PDA を取り出し Lone Star 本部との連絡を取ろうと試みたが、それは徒労に終わった。Duncan に付与された Lone Star の資格はすべて剥奪されており、更に自分と2人、HKPF の指名手配状態に置かれていることも分かった。
「Gobbet、私達もすぐに移動しよう」
ドワーフ― Is0bel というストリートネームを使う―はそう言うと PDA にニュース番組を映し出した。
今晩、ビクトリア・ハーバーでテロリストによる襲撃があり、警官隊との銃撃戦に発展。テロリスト3名を射殺、4名が逃走中。2名はシアトル出身で身元は特定済み。もう2人は顔写真だけで詳しい身元は不明。武装しており大変危険なので、見かけても接触せず、すぐに HKPF へ通報を…
ニュースキャスターが伝える内容はこんな感じだった。
自分と Duncan は System Identification Number (SIN) を持っている。このままでは、街中に配置された監視カメラやドローンからの映像を顔認証に掛けられ、瞬く間に追っ手に捕まってしまうだろう。Is0bel 曰く、
「頭にサイレンを付けてかくれんぼするようなものよ」
裏社会では SIN をデータベースから消去して SINless になる方法があると聞いたこともある。もちろん、この作業は簡単なものではなく Is0bel はもちろん、そこいらにいるデッカーでは到底不可能だそうだ。
だが、ランナーの2人はこれを可能にする人物を紹介しても良いと提案してきた。
”Kindly Cheng” と名乗る彼女たちのフィクサー(仲介人)だ。その名に似合わずトライアド ”Yellow Lotus” の九龍城砦周辺地区を取り仕切るボスでもある。
確かに、SINless になれば HKPF から逃げおおせる可能性はグッと高くなる。しかし SINless になるということは、この世界に”存在しなくなる”わけであり、これまでの生活で築いてきたあらゆるモノを捨て去るということと同義だ。何のツテもない異国の地で、資金、身分、人脈など、あらゆるリソースを失った状態では Raymond を探すどころか、シアトルに帰ることすら難しくなる。
しかも、頼らざるをえない人物が”闇社会の実力者”とくれば(特に Duncan が)たじろぐのも無理はない。だが、もやは自分たちに選択肢など残されていないのだ。